山陰まんなか観光局

ココビトの綴り
山陰まんなかアンバサダーが綴る 届けたいココへの思い
San`in Mannaka Tourism Bureau presents [COCOBITO no TSUDURI]
ココビトの綴り
山陰まんなかアンバサダーが綴る 届けたいココへの思い
izumo_ne_san
2023.03.31
location_on島根県,出雲市,斐川町

旅立ちの前に訪れたい「万九千神社」

神々の「直会」の地

直会(なおらい)とは、祭典に奉仕した神主および参列者が祭典の後に行う儀式のこと。
「もとに戻る」という意味合いである「直り合い」が語源と言われています。
直会では、神前に捧げた神饌(しんせん)と呼ばれる供物をみんなで分け合って食べ、神様が食した供物を食べることによって、神様のお力を分けてもらい、直会をもって全ての行事が終了するというのが目的であり、直会が祭典の一部であることを指しています。
出雲では、この「直会」という言葉を、いわゆる「飲み会」であったり「打ち上げ」の意味で日常的に使っているので、万九千神社を知るまでは出雲地方の方言だと思っていました。

出雲平野の斐伊川の畔に鎮座する「万九千神社(まんくせんじんじゃ)」は、正式には「万九千社(まくせのやしろ)」といいます。地元の方々には「まんくせんさん」と呼ばれ、愛されています。
この神社は、全国的には神無月と呼ばれる旧暦10月に、出雲に参集された八百万の神々が各地へお帰りになる前に、最後にお立ち寄りになる場所とされています。

万九千神社では旧暦の10月26日の夕方に、神々に出雲から出発する時が来たことを告げる儀式「神等去出神事(かさらでしんじ)」が厳かに行われます。

なぜ、この地が神々の直会の地となったのか、以前宮司に聞いてみたところ、出雲平野の水陸両方が交差する場所であり、東西南北の交通の要衝となって交易の場として栄えたからではないかとおっしゃっていました。
雄大な斐伊川と、西日本で一番長い京都から山口を結ぶ国道9号が交差する場所に位置するので、はるか昔から人々が行き来する重要な場所であったのかもしれませんね。

さて、最初の写真で二つの社標があったのが分かりましたか?

万九千神社と同じ境内に鎮座される、立虫神社(たちむしじんじゃ)をご存じですか?
こちらの立虫神社も少しご紹介します。

立虫神社は、出雲市斐川町併川(あいかわ)地区の氏神さま、鎮守さまとして、地元の神立、千家に住む人々から親しみ深く厚い信仰が寄せられているお宮です。

こちらも『出雲國風土記』と『延喜式』に登場するほど、古い歴史を持つ神社。
御祭神は素戔嗚の御子、五十猛命(いそたけるのみこと)と大屋津姫命(おおやつひめのみこと)、抓津姫命(つまつひめのみこと)の三つ柱です。この三つ柱は主に木材、植林、建築を司る神なんだそう。
主祭神筆頭に書かれている五十猛命とその二柱の妹神は木種を持って天降り、その木種を日本中に撒き、植林をし、葦だらけで沼地が多かったこの国を緑豊かな森の国にした、と伝えられています。
もとは斐伊川の中洲に鎮座していましたが、江戸時代前期、寛文10年(1670年)頃、洪水の影響により、現在の万九千社境内に遷されました。

鳥居をくぐって正面に立虫神社、右手に万九千神社があります。

正面には立虫社、右側に万九千社があります。
こちらは立虫神社の御本殿

神々が直会をする「万九千神社」

万九千神社の社殿には大きな直会絵馬があります。

万九千神社には本殿がなく、拝殿の後ろに玉垣で囲まれた高さ約3mの磐座(いわくら)があります。
大きな絵馬のある建物は本殿ではなく社殿となります。
山や大岩をご神体や磐座とするのは日本に古くからある自然崇拝であり、基層信仰の一種と思われます。

平安時代中期に編纂された『延喜式』の中の神名帳にも名が記されているため、少なくとも 1300年以上の歴史を持つ神社、 ということになります。
祭神は櫛御気奴命(クシミケヌノミコト)、大穴牟遅命(オオナムチノミコト)、少彦名命(スクナヒコナノミコト)、八百萬神(ヤオヨロズノカミ)です。
聞きなれない名前だなと思われるかもしれませんが、クシミケヌノミコトは須佐之男命(スサノオノミコト)と同神、オオナムチノミコトは大国主命(オオクニヌシノミコト)と呼ばれることが多い神様です。
スサノオノミコトは誰もが知る、八岐大蛇を退治した神様、オオクニヌシノミコトはスサノオノミコトの子孫で、因幡の白兎を助けた神様です。

万九千神社ならではの授与品や撤下品

万九千神社は神在祭に集われる八百万神の御神徳にあやかって、縁結びや病気平癒、諸会議、直会、宴の円満成就、旅行の安全無事、人生の岐路における諸願成就に霊験ありとされてきました。
最近では、旅の安全を願う旅行者や旅行業、海上安全大漁祈願の海幸御守りや、宴会にゆかりの飲食業の方のご参拝も増えています。

社務所で授与していただける御守りも、万九千神社ならではの「宴会成就・酒乱泥酔除け」や「旅立ちのお守り」海上安全大量祈願の「海幸御守り」など色々な種類があります。

授与品の他に、撤下品(神様にお供えした御饌、御酒の「おさがり」をわけて戴くもの)は、清明な神様のお力を自分の心身に取り入れることができるといわれています。
万九千神社では御神酒のほか、「結び甘酒」、ノンアルコールの御神酒代(御神酒の代わり)などもあり、結び甘酒には出雲大社の御神酒「八千矛」の酒粕と、万九千神社に献上している出雲生姜を使用しています。

ノンアルコールの御神酒代は、神社周辺の畑で育てられた「出雲生姜」を使ったジンジャーエール(出雲生姜じんじゃエール)です。

神社のすぐ近くに出雲生姜の畑とオレンジ色の神立売店があります。

「神社を応援→ジンジャエール」と何とも上手いネーミング♪
斐川地区では出西生姜も有名ですが、こちらの出雲生姜はピリリと辛みが強めの、大人でビターな味わいの生姜です♡
また、神在月には神等去出祭の神事にあたり、宮司が「お発ち~お発ち~と」御神座の扉を叩く「梅の枝」と同じ梅林で育まれた、梅の実を用いた縁起物の「からさでの梅酒」も授与できます。
神在月以外では、ご神酒ではありませんが以前ご紹介した酒持田本店さんや、いづも寒天工房さんなどで購入できますよ。
日本酒仕込みの甘さ控えめの梅酒は、じんじゃエールで割っても美味しいんです♡

直会絵馬も可愛い♡

神様と賑やかにお祭り「大なほらい」

そして今年は令和5年5月6日に令和元年以来となる、万九千神社春祭奉祝祭「大なほらひ」が執り行われます。
こちらは平成28年春に約60年ぶりに復興した神様と人々が酒食を共にする宴のことで、出雲の地酒、出雲神楽の奉納や餅、菓子まきもある、子供から大人まで神様と一緒になって楽しむお祭りです。

立虫神社の社殿は神楽殿として舞台に変わり、ここで奉納される出雲神楽は「神主神楽(かんぬしかぐら)」系統のものを伝えています。本来は神事である神楽の本義を伝えながら、神主と氏子が一体となり奉納される神楽は、舞台が近いので大人はもちろん、地域の子供たちが舞台の端にかじりついて見入ってしまうほど迫力があります。
子供が一番盛り上がるのはやっぱり「八戸(八岐大蛇)」の演目、子供たちの歓声は神楽の一部としてより演目を楽しませてくれます。
当日は出雲市駅から無料シャトルバスも運行されるそうなので、是非お出かけください♡
HPなどでの告知はもう少し後かもしれませんが、現在は境内の掲示板で案内を見ることができます。

可愛らしいネズミの石像も♡

さて、境内でネズミの石像が愛くるしい表情で参拝者を出迎えてくれますが、これは主祭神の一柱の大国主大神は古事記(712年)によると、須佐之男命に野原で火難の試練を与えられた際、ネズミに命を救われたことに由来しています。
ネズミは多産と豊穣を象徴する動物として神様の使い役を担うことから、2021年4月から古事記の一場面をモチーフにした石像が奉納され、その後、市内を中心に建築業や観光業、医療関係者などが次々と奉納し今では神社の新しい魅力になっています。
出雲大社はウサギ、万九千神社はネズミの像が出迎えてくれます。

手水舎の近く、桜の木の下のネズミの像の表情は愛くるしい♡
ネズミも一緒になおらいチュー♡
交通安全も祈願チュー♡
お神酒あがらぬ神はなし♡

20種類以上の可愛いネズミの像があるので、境内をお参りしながらお気に入りを探すのもいいですね♪

後世へ残したい神社周辺の景色

神社周辺を望むと住宅街が広がっていて、都市化が進んでいるのがよく分かります。
万九千神社では「令和の森づくり」を行い豊かな自然の保全も事業として進めています。

まだ新しい神等去出広場には伊勢神宮の遙拝所(遠く離れた所から神仏などを拝むために設けられた場所)や、休憩舎も建てられ、観光客や地域の方々の憩いの場となっています。


遙拝所の案内には伊勢と出雲大社が直線でつながり、古都大和の上も通り、万九千神社もその直線上に鎮まっていると書かれていました…。
知れば知るほど不思議で面白い万九千神社♪

小さくてもたくさんの花を咲かせて出迎えてくれた桜の木、大きくなるのを見守りたい。

この日は夕方参拝したので斐伊川の土手にも上ってみました。小学生以来!
現在の国道9号線、バイパスの真ん中まで歩き(橋の上は風が強いので気を付けて下さいね)、斐伊川を眺めてみましたが、200mを超える川幅は大きくて圧倒されました。

川幅はあるものの川床には大量の砂が堆積し浅く見えるので、なんだか歩いて渡れそうな気もしますが、砂の下には脈々と水が流れていて足を取られて危険なので、河川敷には下りないでくださいね。
斐伊川を見て育ったせいか、他の河川を見て水深が深かったり、水が勢いよく流れていると少し怖いのは私だけでしょうか。

この日は昼は晴れていたので夕日が見えるかな?と期待していましたが、夕方からは雲が薄く広がってきたのでクッキリ綺麗な夕日とまではいきませんでした。
それでもゆっくりと沈んでいく夕日が斐伊川を染めていく様は、美しかったです。

夕日を眺めて、万九千神社へ戻りながら目についたマンホールの蓋。


近くの荒神谷遺跡では1984年~の発掘調査で銅剣や銅鐸、銅矛が出土したので、銅鐸のデザインでした♪
真ん中の「C」みたいな紋章は出雲市に編入される前の斐川町の町章。
新しいものは出雲市の市章に変わっているので、なかなかレアなマンホールの蓋かもしれません♪

まだまだ伝えきれない魅力が沢山ある万九千神社、旅立ちの前や、何か新しいことを始めたいなという気持ちの変化があるような節目の時に訪れると神様に背中を押されるような、清々しい気持ちで一歩を踏み出せる気がします。


万九千神社・立虫神社
島根県出雲市斐川町併川258
0853-72-9412
http://www.mankusenjinja.jp/
あり
※データ・写真など上記情報は記事作成時点のものです。
※臨時休業や営業時間の変更の可能性がありますので、お出かけの際は、最新情報はお店の公式HPや公式SNS、直接店舗にお電話ご確認ください。
※新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、施設へお出かけの際は、鳥取県・島根県や各自治体が発表する最新情報、要請などをご確認のうえ、手洗いやマスクの着用、人と人との距離の確保など基本的な感染防止対策(新しい旅のエチケット)を徹底していただくようお願いします。


圏域の観光情報はコチラ
izumo_ne_san
izumo_ne_san
島根県在住/日本酒スペシャリスト・スイーツコンシェルジュ 20代でUターンし地酒の魅力にどっぷり浸かる。 古き良き田舎暮らしを満喫しながら、現在海辺の古民家をDIY中♪
izumo_ne_san
izumo_ne_san
島根県在住/日本酒スペシャリスト・スイーツコンシェルジュ 20代でUターンし地酒の魅力にどっぷり浸かる。 古き良き田舎暮らしを満喫しながら、現在海辺の古民家をDIY中♪