山陰まんなか観光局

ココビトの綴り 山陰まんなかアンバサダーが綴る 届けたいココへの思い San`in Mannaka Tourism Bureau presents [COCOBITO no TSUDURI]
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独創的なかえしと十割蕎麦「SOBA-CAFE-いさと家」

暑い日は特に食べたくなる、のど越しの良い麺類。

のど越しの良いものと聞いて、私が真っ先に浮かぶのが「蕎麦」なのですが、そんな蕎麦の激戦区ともいえる出雲市に、2025年6月に新たに蕎麦店が誕生しました。

早速お店をご紹介しますので、どうか最後までお付き合いください。

訪れたのは出雲市大社町にある「SOBA-CAFE-いさと家」。

店主の齊藤さんは、元カーデザイナーという異色の経歴の持ち主。
千葉県でご両親が長年営んでいた蕎麦店は、地元だけでなく県外から訪れるファンも多い人気店でしたが、お父さまが他界し閉業することになったそうです。

繁忙期にはお店を手伝い、お父さまの蕎麦打ちを間近で見ていた齊藤さんは、「親父のお店の屋号を残したい」と、お父さまの遺したレシピノートを元に蕎麦の道へ進むことを決意。

新天地を探し求めて見つけた出雲市大社町の古民家で、念願の蕎麦店をオープンしました。

(ホール側から玄関に向かって撮った写真。玄関ホールはバリアフリーです。)


こちらがお店の玄関口です。扉を開けると、ふわっと漂う木の香り。

入り口で靴を脱いでスリッパに履き替えて上がるスタイルですが、上がり框や土間はなく、玄関からホール、店内までバリアフリーに対応した段差のないフラットなつくりになっています。

ホール正面にはメニューがずらりと掲示されていました。

ここで注文するものを決めて、店内のレジにて支払いを済ませ、席で待つ先会計のシステムです。

(メニューは写真付きでわかりやすく掲示されています)
(黒糖チャイから自家製タンゴールソーダまで趣向を凝らしたドリンクメニューも豊富)


蕎麦は5種類。
他に蕎麦粉を使ったスイーツや薬膳茶、無農薬のドリンクもあり、一般的な蕎麦店よりもサイドメニューが充実している印象です。

■お待ちかねのお蕎麦

(手前からそば味噌、行者ニンニク、赤紫蘇、そばの素揚げ)


入り口のメニューを見て、私が決めたのは「もりSOBA」。
友達は「釜上げSOBA」を選びました。
はじめに提供されたのが、写真手前からそば味噌、藍色の小皿には行者ニンニク、小さな白い器には赤紫蘇の佃煮、朱色のお椀に入っているのはそばの素揚げです。

行者ニンニクは奥尻島から取り寄せた天然もので、天然の黒糖と無添加・天然醸造の醤油を合わせた調味料に漬け込んだ自家製の醤油漬け。赤紫蘇はお店の庭に自生しているものを使っているそう。

行者ニンニクは歯ごたえもあり、にんにくの風味が食欲をかき立てます。

香ばしく焼き色が付いたそば味噌も、下戸の私でもチビチビと味噌をつまみながら、お酒を頂きたくなるようなひと品です。

(写真手前がもりSOBA、向かいにあるのが釜上げSOBA)


ほどなくして「もりSOBA」と、「釜上げSOBA」が私たちの前へ。

蕎麦は石臼挽きの雪室そば粉(北海道 幌加内産)を使用した、つなぎなしの十割手打ち蕎麦です。


十割蕎麦というと、麺が柔らかくて切れやすいイメージがありましたが、そんなことはありません。

程よいコシがあり、そばをすすると時折プチっと弾けるような食感が、なんだかクセになりそう!?
つなぎを使わない、蕎麦本来の味わいをダイレクトに感じられる逸品。


ちなみに雪室(ゆきむろ)そばとは、雪を利用して作った天然の冷蔵庫(雪室)の中に玄そば(殻付きのそばの実)を保管し、熟成させた蕎麦のことです。

雪室に入れて一定期間寝かせることで、蕎麦は甘みが増し、夏でも新そばの風味が味わえるといわれているそうですよ。今回私もお店を取材して初めて知りました。蕎麦は奥深いです!

(伏せた竹ざるの上に盛り付けられた蕎麦。なんだか粋な感じがする!)


蕎麦の上の「イルカ」が遊び心をくすぐります。

思わずこのイルカの型抜きを見て、もはや型抜きだけ並べたメニューがあってもユニークかも?

そんなことを思った私は邪道でしょうか?

■奥深い味わいの「そばつゆ」

そばつゆは一見シンプルに思えますが、蕎麦をつゆに絡めてひと口頬張ると、蕎麦の旨味を格段に引き立てるような味わいに驚きました。

とても深みを感じるつゆの甘さは、これまで出会ったことのない味です。

この奥深い味わいは、どうやって作られているのでしょう?

(齊藤さんがお店で使っている黒糖を見せてくださいました。)


そばつゆに使われるかえしは、一般的に醤油・みりん・砂糖を合わせたものですが、いさと家では砂糖を使わず黒糖で仕込んでいるそう。


砂糖(白砂糖)は、サトウキビや甜菜(てんさい)から抽出された糖液を精製し、結晶化して作られたものに対し、黒糖はサトウキビのしぼり汁をそのまま煮詰めて作る天然の砂糖です。

作る過程で精製する作業を行わないので奥深い甘さと独特なコクがあり、これがあの味わいへと仕上がるのだそう。
黒糖を使ったかえしは、生前お父さまが営んでいた蕎麦店のレシピを引き継いだものですが、黒糖の種類だけは独自に変えていると齊藤さんは話します。


「僕は自然素材に拘りがあって。沖縄県の多良間産の無農薬自然栽培されたサトウキビからの黒糖が1番良かったので黒糖だけは変えました。あとは親父の遺したレシピのままです。」

しばらくしてそば湯が提供されました。
あとから気づいたのですが、そば湯にそば味噌を混ぜて飲んでも良かったかも……!

こちらは友達の選んだ「釜上げSOBA」。

お父さまのお店にはなかったメニューで、こちらはいさと家オリジナルです。


「もりSOBA」「釜上げSOBA」の他には、地元の農家さんが育てた無農薬野菜をトッピングした「山神SOBA」や、河内鴨を使用した合鴨南蛮SOBAもあり、拘りを感じるメニューばかりです。

■蕎麦スイーツもいただきました

(SOBAパウンド)


そしてこちらは蕎麦粉を使ったパウンドケーキ。

お店で出すスイーツメニューを考えていた時に、趣味のキャンプでよく作っていたスイーツを思い出し、メニューに取り入れてみたのだとか。

蕎麦の香ばしさと黒糖の甘さの中にちょっぴり感じる塩味。この甘じょっぱさは塩キャラメルにも似た味わいです。

(SOBAシフォン)


こちらは友達が選んだ「SOBAシフォン」。

蕎麦粉を使ったシフォンの上に、すもものコンポート。

すももは齊藤さんのお父さまの知人が自然栽培で育てたものだそう。周りには、すももジャム、藻塩入り純正生クリーム、蕎麦アイス、仕上げに黒糖ソース。

ジャムからソースに至るまで、すべて自家製でオリジナリティ溢れるスイーツです。


個人的に気になったのがお値段。

えっ、これ本当に400円?なんと私がいただいたSOBAパウンドと同じ値段!

今回友達がSOBAシフォンを選んだので、私は違うスイーツを選びましたが、次に訪れたときはこのSOBAシフォンを選ぶかもしれません!笑

(ストローの素材、なんと竹でした!細かい部分まで拘りを感じます。)


そしてこちらは自家製梅ソーダと自家製タンゴールソーダ。

自家製梅ソーダは、青梅の黒糖漬けを炭酸水で割ったもの。梅の爽やかな酸味のあとにくる黒糖のコク深い甘さ。独特な味わいの梅ソーダです。

自家製タンゴールソーダは千葉の齊藤さんの実家に実っていたタンゴールを、出雲に引っ越す際に全て収穫して持ってきたのだそう。

苦味と酸味が強いタンゴールは、天然の蜂蜜を入れてまろやかに仕上がっています。

■店主の齊藤功さん、友人の藤原幸成さん

(写真向かって左から店主の齊藤功さん、友人の藤原幸成さん)


こちらが店主の齊藤さん、そして一緒にお店を手伝っている友人の藤原さんです。


これまでカーデザイナーとして32年、そして本業とは別に、水中や海辺の生物を中心に撮影する水中カメラマンとして20年以上活動を続けていた齊藤さん。

料理業界とは無縁にも思えますが、お父さまのお店の繁忙期を手伝っていたこと以外にも、長年趣味のキャンプで料理を作っていた経験もあり、飲食業の開業に不安はなかったそう。

それでも「親父の遺したレシピノートのおかげで、今の『SOBA-CAFE-いさと家』がオープンできた事が自分の中で1番大きいです。」齊藤さんは話します。

水中撮影の仕事で日本各地を飛び回っていた際、齊藤さんの楽しみの1つだったのが、空いた時間を利用して郷土料理巡りをすることでした。そんな中、沖縄の離島を巡っていた際に出会ったのが、蕎麦のかえしに使われている多良間産の無農薬自然栽培の黒糖です。
「この産地だからこそ出せる素材の味わいを、いさと家を訪れたお客様にも味わってもらいたいと思い、なるべく調味料は拘るようにしています。」
身体に良い料理を提供することが、お客様へのおもてなしだと齊藤さんは考えています。

(開放的な空間を演出する勾配天井)


お店は齊藤さんと友人の藤原さんが約1年かけてDIYで完成させました。

お店を訪れた人に心地よく食事を楽しんでもらいたいと、木の香りがリラックス効果をもたらす「フィトンチッド」を意識して、杉と檜の木材を使い、木の香り漂う空間作りに拘っています。

お二人でここまで仕上げるのは大変だったはず。お店作りで苦労した点を尋ねると、

「自然の木材を仕入れていたので、完璧な寸材はなく、歪みのある木材と貼り合わせで隙間を補正するのに1番苦労しました。」齊藤さんはこう話します。
また、梁のある天井の部分も、木材同士を合わせるのにかなり時間をかけて作り上げたそう。

(可愛らしい魚や珍しい海の生物に、まるで海の資料館に来ているよう!?)


店内の壁に展示されている、鮮やかな深海魚やイルカなど、たくさんの海の生き物のフォトパネルは齊藤さんが撮影したもの。どれも齊藤さんの感性が伝わってくるような素敵な写真ばかりです。
是非このフォトパネルにもご注目くださいね。

最後に、お店の洗面所もご紹介させてください。

左の枠の中にあるのは古民家をリノベーションする前の壁の一部です。

昔の壁は、竹を組んで土台を作り、その土地で採れる土とワラを混ぜ、それを塗り重ねたものでした。そんな昔ながらの工法を、こうして「見せる」形にして残すことに、齊藤さんのクリエイティブな感性を感じます。

(こちらはお店の庭にある梅の木。梅ジュースの梅はこの木から収穫したものだそう。)


いかがでしたか?

蕎麦はもちろん独創的なかえしや、趣向を凝らしたスイーツもドリンクも拘り尽くし。

夏の期間中はカフェタイム限定で、長野の八ヶ岳天然氷を使ったかき氷も販売中。

イチゴや抹茶、スイカなど約6種類のシロップは無添加・自家製です。

通し営業という営業スタイルも魅力の「SOBA-CAFE-いさと家」。
是非チェックしてみてくださいね。

SOBA-CAFE-いさと家
住所
島根県出雲市大社町菱根1045-4
営業時間
11:00〜18:00 (LO17:00)
定休日
木曜日、金曜日
公式サイト
https://www.instagram.com/soba_cafe_isato/
駐車場
10台
※データ・写真など上記情報は記事作成時点のものです。
※臨時休業や営業時間の変更の可能性がありますので、お出かけの際は、最新情報はお店の公式HPや公式SNS、直接店舗にお電話ご確認ください。
※新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、施設へお出かけの際は、鳥取県・島根県や各自治体が発表する最新情報、要請などをご確認のうえ、手洗いやマスクの着用、人と人との距離の確保など基本的な感染防止対策(新しい旅のエチケット)を徹底していただくようお願いします。

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山陰の魅力を食を通じて伝えていきたい。 ほんの少し笑いの小ネタも添えて(・Θ・)
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