山陰まんなか観光局

ココビトの綴り
山陰まんなかアンバサダーが綴る 届けたいココへの思い
San`in Mannaka Tourism Bureau presents [COCOBITO no TSUDURI]
ココビトの綴り
山陰まんなかアンバサダーが綴る 届けたいココへの思い

『いにしえとの対話』──宮大工「後藤屋」の世界

昨年、宮大工の職人集団「後藤屋」さんのカレンダーを作成させていただきました。
神社やお寺の歴史を感じさせる雰囲気が昔から好きだったので、それを造っている職人さんにもとても興味を持ち、職人さんたちの仕事についてお話を聞かせていただきました。


  • 宮大工とは
  • 「後藤屋」職人に尋ねた、仕事への向き合い方
     ・道具は手の延長
     ・当時のものをできるだけ残す
     ・木も人も適材適所
  • 伝統の技を後世に
  • 後藤屋が関わった社寺
     ・清水寺
     

●宮大工とは

安来の自然に囲まれた場所に、宮大工の職人集団「後藤屋」はあります。

宮大工とは、社寺仏閣の建築や補修を行う大工のことを言います。
釘やネジなどを使わず、のみやカンナといった手道具で木と木を組み合わせるという、高度な技術を持っている職人さん達です。


資料も少ない何十年、何百年前の建物を、設計図を作り修復していく。どの柱は残せるのか、いや、どの柱のどの部分は残せるのかまで、木を1本ずつ綿密に調査をします。

「昔の職人がどんな仕事をしたのか見せてもらえる。どんな想いで作っていたのか、建物を通して当時の木と人と対話をして、理解する」


まさに「いにしえとの対話」です。

そんなことにまで想いを馳せる仕事のかっこよさや、仕事に対しての心意気にどんどん惹かれていきました。
この記事では、職人さんたちの仕事やお話を聞かせてもらった中で特に心に響いた言葉を、いくつかご紹介したいと思います。

後藤屋5代目 後藤史樹社長。普段は面白い社長さんだが、木を見つめると途端に顔が変わる。

●「後藤屋」職人に尋ねた、仕事への向き合い方


「道具は手の延長」

宮大工として、とても有名な西岡棟梁の言葉です。

「自分の想いを手を通し、道具を通して物を作る」


そうなるまでにどれだけの努力をし、木と向き合うのか。職人さんの仕事への熱い想いがこの1文に詰まっているように感じました。

職人になるとまず1番にやるのが、刃物を研ぐことだそうです。
大工の世界では「研ぎ一生」という言葉があるほど、道具を手入れすることがどれほど大切か教えられます。

「道具を見ればどんな仕事をするのかわかる。
何年も使っていない道具でも、きちんと手入れがしてある道具はいつでもすぐに仕事ができる」


実際に見せてもらった道具たちは、刃先がピカピカに光っていました。
何十年と削り続けられ、刃先が小さくなるほどに。

左が最初の大きさ。何十年も研いでいると右のように刃先が小さくなっていきます。どれほど大切に使っているかがよくわかる。

「当時のものをできるだけ残す」

社寺仏閣を修復するときは、「すべて新しいものにするのは簡単なこと。でも、できるだけ当時の木を残して継承していかなければいけない」とのこと。

腐っている木だけを取り換える。柱でもほんの一部分、柱の中(芯)だけを取り換える。
それは、当時の木や当時の仕事を大切にするため。

新しい部分と古い部分が融合する感じが、時空を越えて一緒に仕事をしているようで、想像すると震えてきます。

柱や床板などをよく見てもらえたら、そんな宮大工の仕事が発見できるかもしれません。

神社の床板。左が当時の木、右が新しい木に。

「木も人も適材適所」

木は種類によって硬さや質感が違うし、育ってきた場所によって捻れたり反ったりしているそうです。その木の特徴をしっかり読み取り、特徴に合わせて使う場所を選び、組み合わせることで、頑丈な建物を造ることができます。

「人も一緒で、皆それぞれ個性がある。その個性をどう生かすのかが大切」


人も木も『みんな同じ枠』にはめるのではなく、それぞれ個性があって当たり前。みんな違ってこそ、それが組み合わさって強いものができる。そんな考え方に深く感動し、日常の中でこの言葉をよく思い出すようになりました。

木を読む。

●伝統の技を後世に

何百年に渡って続いてきた技術・仕事への姿勢。
昔の工法を守り、次世代に伝えていくことの大切さを社長から聞かせていただきました。

できるだけ師匠と一緒に過ごし、時には寝食を共にすることで、技術だけでなく歴史や木への向き合い方、職人としての心意気を肌で感じながら、職人へと成長していくんだそうです。

「自分のした仕事が、何百年の歴史の一部となる」


「何十年後、何百年後にまた誰かが自分の仕事を見ることになる。その時に恥ずかしくないよう、妥協はしない」そうおっしゃっていました。

その妥協のない仕事が、今も日々受け継がれています。


●後藤屋の携わった建物

後藤屋が手掛けた仕事は、島根県内だと出雲大社や松江城、清水寺など沢山あり、県外では二条城、吉備津神社などもあります。
宮大工さんの仕事を知ってから訪れると、また違う視点で楽しめるかもしれません。

清水寺

安来にある清水寺。驚くほど大きな杉に囲まれているお寺です。
この木達は歴史をずーっと見てきたんだろうな。そんなことを思いながら歩きました。

清水寺は、約1400年前に尊隆上人が開いたお寺とされています。

当時は山深く、木が鬱蒼と生い茂る不気味な山で、夜になると里に向かって一条の光が現れていたそうです。尊隆上人が光の源を調べるために山を登っていくと、白髪の老人が現れて「今日まで観音様をお祀りしてきたが、そろそろ次の世に行かねばならぬので、代わりにお祀りしてくれる人を探していた」と一体の霊像を託されました。
その後、尊隆上人が小さなお堂を建ててお祀りされたことが、お寺の始まりだそうです。

眺めのいい、空気の澄んだ場所に。
圧巻の三重塔。
あらゆるところに宮大工の仕事が隠れています。

お堂を見ていると、いろんな所に職人さんの仕事を見つけることができました。

梁の一部分だけ、新しい木に替わっていました。


後藤屋さんの仕事では、外観ができるだけ変わらないように柱を真っ二つに切り、中の芯だけを入れ替えることもしたそう。見えない所にも、職人の技があるんですね。


1400年もの間、たくさんの人の手で守られてきたお寺。そこに、宮大工「後藤屋」も加わっているという歴史。それぞれの時代に、それぞれのプライドを持ち、木と向かい合う。こうして継承されてきた建物や宮大工の技術が、これからもずっと続くよう祈りました。

ぜひ訪れてみてください。

後藤屋
島根県安来市伯太町安田山形15
0854-37-1126
https://www.gotouya-yasugi.com/
※データ・写真など上記情報は記事作成時点のものです。
※臨時休業や営業時間の変更の可能性がありますので、お出かけの際は、最新情報はお店の公式HPや公式SNS、直接店舗にお電話ご確認ください。
※新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、施設へお出かけの際は、鳥取県・島根県や各自治体が発表する最新情報、要請などをご確認のうえ、手洗いやマスクの着用、人と人との距離の確保など基本的な感染防止対策(新しい旅のエチケット)を徹底していただくようお願いします。
圏域の観光情報はコチラ
maki__photograph
maki__photograph
島根県在住。趣味のカメラで、人や風景など自分の好きなものを撮っています。山陰のステキな場所や人をお伝え出来るようがんばります!
maki__photograph
maki__photograph
島根県在住。趣味のカメラで、人や風景など自分の好きなものを撮っています。山陰のステキな場所や人をお伝え出来るようがんばります!