天国の大切な人に手紙を「黄泉比良坂(よもつひらさか)」
天国のあの人に気持ちを伝えたいと思ったことはありませんか?
出雲地方には、古事記に記された神話に登場する「死者の国と現世との境目」とされる場所があるんです。なんでもそこには故人に宛てた手紙を出す事ができる「天国へのポスト」なるものがあるそうな。
というわけで今回は、島根県松江市東出雲町の「黄泉比良坂(よもつひらさか)」をご紹介いたします。
神話に登場する“冥スポット”
黄泉比良坂は日本国土を造った二神、イザナギ・イザナミ夫妻にまつわるスポットで、とても悲劇的なエピソードがあるんです。
子を産むも命を落としてしまったイザナミに会うため、イザナギは黄泉の国(よみのくに)に立ち入りますが自らの腐敗した死体をイザナギに見られたイザナミは激怒し、1,500の黄泉の軍勢を従えイザナギに襲いかかります。たまらず逃げるイザナギはあの世である黄泉の国と、この世である葦原中津国(あしはらのなかつくに)の間にある黄泉比良坂に千引岩(ちびきいわ)を置き、道を塞いで分断してしまいました。
イザナミは岩越しに「私は1日に1,000人の人間を殺すでしょうと」と叫び、イザナギは「それでは私は1日に1,500人の子供を産ませよう」と応え、二人は離縁。これにより人口が増えていくこととなったそうです。
こちらはかなり省略してあるので、興味のある方は古事記を読んでみてください。
さて、黄泉比良坂は観光スポットとして整備されており、駐車場について車から降りるとすぐに行くことができます。
変わった格好のしめ縄をくぐり、少し歩くと一番奥に千引岩らしき岩が見えてきます。
辺りは緑に囲まれとても静かで、全体的に薄暗い空間が広がっていました。
天国への手紙
岩の隣には何やらポストのようなものがあります。そうです、これが天国へのポストです。
専用の便箋も用意されているので、その場で書き込んでポストへ投函することができます。
せっかくなので私も数年前に他界したおじいちゃんに手紙を書いてみました。
書いている途中で、木や竹でおもちゃを作ってくれたこと、魚釣りを教えてくれたこと、お祭りに一緒に行ったことなどが浮かびます。
実際に手紙が届くかどうかはわかりませんが、こうして故人のことを改めて思い出すのはとっても良いことだなと感じました。
怪しい山道に入ってみる
手紙を投函し、さて帰ろうかと思い来た道を歩いていると、来る時にはスルーしていた分かれ道が見えてきました。ボロボロの木の看板に書かれているのは「塞の神(さいのかみ)」と「伊賦夜坂(いふやざか)」の文字。塞の神は邪神の侵入を防ぐ神のことで、伊賦夜坂は黄泉比良坂の別名です。
何やら不穏な空気が漂っていますが、意を決して突入してみることにしました。
道は整備されておりとても歩きやすいのですが、ちょうど夕方に差し掛かっていましたので、薄暗く木々の間から差し込む夕陽が神聖で少し不気味な空気を醸し出していました。
奥に進んでいくと、石がたくさん積んである場所があります。なんとも言えない雰囲気の中でこういった不気味なものを発見すると流石に怖くなってきます。
しかしご安心ください、これが邪神の侵入を防ぐ=さえぎる神→さえの神、さらに転じて「塞の神」となったパワースポットなのです。
そのまま奥に進むと出口に辿り着きました。どうやらこの道は黄泉平坂へ行く別ルートだったようです。
不気味で優しいハートフルスポット
いかがでしたでしょうか?今回は島根県松江市東出雲町の黄泉比良坂をご紹介いたしました。
神話の由来や現地の雰囲気から不気味な空気感が漂うなか、故人に向けた手紙を書くことで心が暖かくなりました。
あの世とこの世の境界で、不気味だけど心が暖まる不思議な体験ができるスペシャルスポットですので、ぜひ行ってみてください。
- 住所
- 住所
- 島根県松江市東出雲町揖屋
- 駐車場
- 駐車場
- あり(4台程度)