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安来市加納美術館
shimanekurashi
2023.05.17
location_on島根県,安来市

美術品コレクション満載!平和学習にも力を入れる「安来市加納美術館」

美術館や博物館に行くのが趣味の私たち「しまね暮らし」です。
今日は安来市加納美術館をご紹介します。

安来市加納美術館とは

安来市加納美術館

安来市広瀬町布部の自然に囲まれた美術館です。近くには布部ダムや広瀬絣で有名な広瀬町の町並みもあります。
旧布部村出身の画家、加納莞蕾(かのうかんらい、本名は辰夫)氏の作品を中心に、地元作家の彫刻や工芸品や茶道具、備前焼のコレクションを揃えています。
白い壁の美しい武家屋敷のような建物ですが、中はどんな感じなのでしょうか、入る前からワクワクしますね。

美術館の前に、別館「莞蕾館」について

安来市加納美術館別館

加納美術館に入る前に、隣に建つ別館「莞蕾館」の話をさせてください。
こちらの建物は画家・加納莞蕾が後年になって精力的に取り組んだ水墨画や書画を展示している部屋と、レストランやまさやとミュージアムショップで構成されています。

なぜ、美術館の前に紹介したいかと言いますと、この建物、実は莞蕾の生家を基礎としているからです。
引き戸をガラガラと開けて敷居をまたいで、そっと見上げてみてください。立派な梁が目に入ります。こちら!!なんと、当時の生家の梁そのままなのです。

安来市加納美術館別館
※梁の写真を撮り忘れたため、安来市加納美術館さんに後日撮影して送っていただきました。ありがとうございました!!


先ほどの莞蕾作品の展示室には、まさに莞蕾少年が暮らした茅葺き屋根の生家が撮影された写真が飾ってありました。
現在、美術館が建っている場所も含めて、周りは田んぼに囲まれています。なかなかのポツンと感です。
今は日本庭園あり、茶室あり、と和の趣にひたれる空間になっているので、ちょっと衝撃的に感じました。

安来市加納美術館日本庭園
別館「莞蕾館」の前には、素敵な茶室やお庭があります。
安来市加納美術館庭園の鯉

池にはたくさんの鯉も泳いでいて、近づいて顔を覗かせると、なんか食べ物くれるのか?と寄ってきてくれますが、「何もないんだよ」と言うとサァーといなくなってしまいました。

安来市加納美術館の歴史

では、ようやく本館、美術館へ。まずはその成り立ちから少しお話します。
開館は平成8年(1996年)11月1日です。設立当初はなんと私設美術館でした。
莞蕾の長男である溥基(ひろき)氏が父親の作品を収蔵できる場所をつくりたい、また、今では教科書にも掲載されている莞蕾の平和思想を伝えている、フィリピン日本人戦犯の助命嘆願書の往復書簡などの資料をきちんと保存したい……
さらに、地元の芸術家の作品を収蔵していける美術館の要望があったことなどが重なり、美術館設立に至ります。

その後、平成14年(2002年)には、旧広瀬町に寄贈され、「広瀬町立加納美術館」となります。
そして、3年後の平成17年(2005年)には市町村合併により、「安来市加納美術館」となりました。


1階に3つの展示室、2階には2つの展示室があります。
2階の展示室の1つは、前述の加納莞蕾の平和活動の軌跡を紹介する常設展示室になっているようです。

<展示の様子>

安来市加納美術館内
日本画の間(2023.4 企画展の様子です)
安来市加納美術館内
洋画の間(2023.4 企画展の様子です)
安来市加納美術館内
備前焼と彫刻の間(2023.4 企画展の様子です)


それぞれの展示室は良い意味でコンパクト。
飾られている作品もとても身近に感じられるようになっていました。

収蔵品の成り立ち~備前焼&茶陶

安来市加納美術館内備前焼
企画展での展示の様子(2023.4)


加納溥基氏は岡山県で会社を経営されていました。
美術館設立に向けて動き出すも、父莞蕾の作品だけではコレクションとしては少なく、自身の趣味であった茶の湯や陶芸の作品も収集することになります。
特に岡山県ゆかりの備前焼のコレクションは現在では550点を超えています。その中には貴重な古備前や5人の人間国宝の作品も含まれています。
おそらく企画展が変わるごとにその時のテーマに合わせた備前焼が展示されているはずです。とてもマニアにはたまらない美術館なのだろうな……と感じました。

※備前焼の作品について……企画展の内容によっては展示がない場合もあるそうです。ご来館される前にHPなどでご確認くださいね。

茶陶も様々な種類の茶道具を揃え、安来市出身の陶芸家である河井寬次郎など地元作家の作品もあります。今回の展示でも、私たちが好きな民藝の器を見ることができ、テンションが上がりました。

2F常設展「今こそ世界の平和をー莞蕾の想いにつなげてー」

安来市加納美術館内
安来市加納美術館内

美術品を展示しているだけではない、安来市加納美術館のもう一つの顔、それは「平和について学ぶ、考える」平和学習の場です。
莞蕾は、ただの画家ではないのです。
第二次世界大戦(太平洋戦争)後に従軍画家として中国から引き揚げた莞蕾。その頃に出会った元海軍少佐が戦争裁判で死刑判決になります。
それがきっかけで日本人フィリピンBC戦犯の助命嘆願書をフィリピン大統領はじめ、世界の要人たちに送り続けました。(その数300通!!)そして戦犯解放後も続けた、世界恒久平和への活動の軌跡が展示されています。

安来市加納美術館内

莞蕾のこの思いは、現在、中学校の歴史教科書、また、『しまねの道徳』に掲載されています。安来市の中学3年生は授業で学習後、美術館へ来て再度確認をする活動が行われているそうです。

このコーナーは時期によって多少の展示替えがあったり、テーマが変わったりすることがあるようです。その一環として莞蕾の画家とは異なる一面を教えてくれます。

恥ずかしながら、戦後このような活動をしていた島根県の方がいらっしゃったことを今まで知りませんでした。
そのため、訪問日に開催されていたギャラリートークにて千葉館長から直々に説明を聞くことができ、大変勉強になりました。

安来市加納美術館 千葉館長
ギャラリーツアーで説明してくださった千葉館長。
安来市加納美術館 千葉館長

この日は千葉館長が分かりやすくお話してくださいました。
こちらの館長さん、とても気さくな明るく話しやすい方でした!!絵や美術のことも分からない初心者の私たちにも丁寧に熱く語ってくださいました。(ありがとうございました!!)

展示物をじっくり読めばどんなことがあったのか理解できますが、急ぎでなければ学芸員さんに説明をお願いしてみてください。
莞蕾がどんな人物であったのか、この美術館の役割やこれから目指すところなどがとてもしっくり分かるようになると思います。

※事前に説明を希望の旨をご連絡いただけると良いとのこと。

展示室内はなんと!!撮影OK ※展示の内容にもよる

安来市加納美術館

こちらの美術館、驚いたのが、撮影OKだったこと。
※動画はNG、フラッシュや三脚不可など注意点はありましたので守りましょう。
なお、展示の内容によっては撮影NGの時もあることも。私たちが来館した時期はOKでした。

SNSへの投稿も大歓迎!
安来市加納美術館さんもSNSを頻繁に更新されているので、ぜひこちらもチェックしてくださいね。

Instagram:https://www.instagram.com/yasugi_kano_museum/
Facebook:https://www.facebook.com/Art.YasugiKano
Twitter:https://twitter.com/ysg_kano_museum


鑑賞後はぜひお昼や喫茶もおすすめ!「レストランやまさや」

莞蕾館の「レストランやまさや」とミュージアムショップは、美術館に入館せずとも、誰でも飲食や売店の利用が可能です。
私たちは、ステーキライスとトンカツランチをいただきました。どちらもボリューム満点でお腹一杯になりました!
ステーキライスはなかなかインパクトのある見た目です。
トンカツもできたてをいただけて、熱々サクッでした。

レストランやまさや トンカツランチ
トンカツランチ
レストランやまさや ステーキライス
ステーキライス

そして、食後のコーヒー(こちらメニューに載っている正式な名前)を頼みました。
贅沢にも備前焼のカップでいただくことができます。ミュージアムショップでも同じカップが販売されていました。

レストランやまさや 食後のコーヒー

また、座った席から気になる箱が見えまして、ちらりとアイスキャンディーの文字が。
もしやと思って近づいて確認してみると、予想どおり安来市で有名な老舗の「佐川末廣堂」ではありませんか。
デザート代わりにとユズ味とあずき味を注文、というか、そばに代金を入れる瓶が置いてあって、お金を入れて自分で取り出すセルフスタイルです。

佐川末廣堂アイスキャンデー
佐川末廣堂アイスキャンデー

持ち手の棒が割り箸を使っているのに軽い驚きを受けながら、手作り感があって良かったです。
ただ、しっかり固めで歯ごたえがあるので、食べたい少し前から取り出しておくといいかもしれません。

関連書籍もレストラン隣ミュージアムショップで販売

安来市加納美術館関連書籍

レストラン隣のミュージアムショップではもちろん、莞蕾の関連書籍も販売されています。




現在開催企画展「安来市加納美術館の名品展 収蔵品カタログ①」5/21(日)まで

安来市加納美術館

多くの収蔵品の中から「春」をテーマにした作品を展示。
詳しくはこちらをご覧ください。
https://www.art-kano.jp/exhibition-info/current-exhibition/157

5/27(土)~7/30(日)企画展「楽山焼の色絵」

松江藩の御用窯、そして不昧公から愛されてきた楽山焼。釉薬や技法、絵柄など「色絵」に注目した展示。

2023年展示予定

安来市加納美術館2023年展示予定

田んぼや山と川に囲まれた自然いっぱいの中にある素敵な美術館でした!
ぜひアートに興味がある方はもちろん、平和について今一度学びたい、知りたい方にもおすすめの場所です。

※掲載している写真は2023年4月末、展示の様子です。

安来市加納美術館
安来市加納美術館
住所
島根県安来市広瀬町布部345-27
営業時間
9:00-16:30(入館は16:00まで)
定休日
毎週火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12/25-1/10)、展示替えによる休館日あり
電話番号
0854-36-0880
公式サイト
https://www.art-kano.jp/
駐車場
あり
※データ・写真など上記情報は記事作成時点のものです。
※臨時休業や営業時間の変更の可能性がありますので、お出かけの際は、最新情報はお店の公式HPや公式SNS、直接店舗にお電話ご確認ください。
※新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、施設へお出かけの際は、鳥取県・島根県や各自治体が発表する最新情報、要請などをご確認のうえ、手洗いやマスクの着用、人と人との距離の確保など基本的な感染防止対策(新しい旅のエチケット)を徹底していただくようお願いします。
レストランやまさや

美術館隣「レストランやまさや」

前日までの予約でランチ弁当の注文も可能。
お弁当を手に、布部ダム見ながらお昼ご飯もおすすめです。

レストランやまさや
営業時間
ランチ 11:00~14:30(オーダーストップ14:00) ディナー 17:00~21:00(完全予約制)
定休日
毎週火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
※データ・写真など上記情報は記事作成時点のものです。
※臨時休業や営業時間の変更の可能性がありますので、お出かけの際は、最新情報はお店の公式HPや公式SNS、直接店舗にお電話ご確認ください。
※新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、施設へお出かけの際は、鳥取県・島根県や各自治体が発表する最新情報、要請などをご確認のうえ、手洗いやマスクの着用、人と人との距離の確保など基本的な感染防止対策(新しい旅のエチケット)を徹底していただくようお願いします。
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レトロ建築や喫茶店、美術館巡りが好きな夫婦。 山と田んぼが目の前!自然に囲まれて暮らしています。 山陰まんなかで行ってみて良かったところ、おすすめスポットを紹介しています。
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