山陰まんなか観光局

ココビトの綴り 山陰まんなかアンバサダーが綴る 届けたいココへの思い San`in Mannaka Tourism Bureau presents [COCOBITO no TSUDURI]
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感動は自然と人との結び目に。日南町

人と自然は、それぞれ別の二つの要素です。
しかし、人は自然の恩恵がなければ生きてはいけませんし、自然もまた人の手が入らなければ荒廃してしまう場合があります。

しかしながら、この二つは“ただそこにあるだけ”では、うまく噛み合わないのも事実です。
人は山を削り、川を埋め、自然を破壊しながら暮らしの基盤を整えてきました。
反対に自然は良くも悪くも無慈悲で、時に人に牙を剥き、災いをもたらす時もあります。
両者は勝手に仲良くなるほど、都合よくできてはいないんです。
だからこそ「結び目」が必要になります。
意図してつくらないと生まれない、自然に対し、人の仕事が関わる“つながり”のしるしです。

今回は、自然と人の結び目によって、美しさと営みが良い循環をしている町、鳥取県の日南町をご紹介いたします。

ホタル

日南町には、森が連なる緑の景色と、澄んだ水辺の風景があります。
そして、そのような環境で見られるものの一つが「ホタル」です。

特に日南町の福万来(ふくまき)にある「福万来ホタル乃国」は2種のホタルをほぼ同じ場所で同時に鑑賞できる絶景スポットで、ホタルが見られる期間中には多くの人が集まります。
ここで鑑賞できるのは、水辺に生息し、緑色の数秒間の発光を繰り返しながら飛ぶ「ゲンジボタル」と、山辺に生息し、短い間隔で黄色くチカチカと点滅を繰り返す「ヒメボタル」です。
同じ夜に発光パターンが違う、二つのホタルを見比べられるスポットはそう多くはありません。

特筆するべきはヒメボタル。こちら見に行こうとすると、目的地が真っ暗な森や林の中になりがちで、難易度が上がります。あと、単純に暗いのが怖いです。
福万来ホタル乃国は、ゲンジボタルが見られる川のすぐ近くに、ヒメボタルが見られる山があり、その斜面の木々を整備することでヒメボタルを鑑賞できるスペースを確保しているんです。
自然が豊かだから見られるのはもちろんですが、こうした「見えるようにするための場所づくり」がある。
ここに自然と人との“結び目”があるんです。

山に生息するヒメボタル、ピーク時の光景は圧巻。

森のバランス

ホタルの話になると、しばしば「水がきれいだから」という言葉が出てきます。
もちろんそれは必須条件なのですが、福万来のことを考えると、それだけでは説明しきれません。
というのも、水がきれいな“だけ”なら、ホタルが見られる場所はもっと増えてもいいはずなんです。
それでも場所が限られるのは、ホタルが水だけで生きているわけではなく、周辺の環境……つまり「森」の状態に強く影響を受けているからです。

日南町の良さは、森がちゃんと“健康で生きている”ということ。
ここで言う健康な森というのは、単に木が多いという意味ではありません。鬱蒼とせず閉じすぎず、かといってスカスカでもなく、光が差し、影が残る場所もある。風が通りつつも湿り気が残り、落ち葉が土を育て、森の中で「循環」が回っている状態です。
そして、忘れてはならないのが「暗さ」です。
夜が明るすぎる場所では、ホタルは生息しづらくなります。
周囲の光環境の影響をとても強く受けるんです。
しかし、日南町はこの“夜の条件”が残っています。

つまり、日南町でホタルが多く生息できるのは、水が綺麗だからでもあり、同時に、森が健康で、循環が回っていて、夜の暗さが残っている。
複数の要因がバランスよく“保たれている”からなんです。

真っ暗な夜、しかし空を見上げると賑やか。

自然のカラマリをほどく人の手

「ここは自然が豊かで、ホタルがたくさん見られる町です。」
ここまでなら、どこの地域にでもある紹介文です。ですが日南町は、その豊かさが“元々あった自然”だけでは完結していません。

実は、森の手入れをしている林業従事者の仕事が、ホタルの環境を支えているんです。
森が健康であることが前提と書きましたが、その健康は放っておけば勝手に維持されるものではありません。特に里山は、手を入れなければ閉じすぎたり、逆に荒れたりして、循環が偏っていきます。偏れば、生き物の居場所も偏る。ホタルだって例外ではありません。
さて、「木を切る」という行為ですが、一見するとどうしても「壊す」という印象が先に立ち、自然を削っているように思ってしまいますよね。
ただ、林業の現場で行われている多くは、森を壊すためではなく、森を守るために手を入れる仕事です。混み合った木を間引き、光を入れ、風を通し、下草や土が息を吹き返すきっかけを作ります。

ホタルの話に戻ると、ゲンジボタルがいる水辺の環境も、ヒメボタルが見られる森の環境も、突き詰めれば「森のバランス」が重要なのです。
その下支えには、森に入って手を動かす人の存在は欠かせません。
しかしこの仕事、基本的に目立ちません。
観光の主役にもならないし、写真のフレームにも入りにくいです。
けれど、やっていることは未来に直結しています。森が荒れれば水が変わり、水が変われば生き物が変わるのです。
だから日南町のホタルは、ただ自然の奇跡として眺めるだけではもったいない。
あの燦然と輝く夜の光は、「森の手入れ」という人の仕事の上に成り立っているんです。

放置しておいたらできてしまう誤った結び目、言うなれば“カラマリ”をほどく。
そして正しい位置に、適切な結び目を作り直して、森を健全化しているのです。

適度な隙間を開けるように手入れ。
林業従事者に敬意を表します。

木を活かす

一方で、木を活かす人もいます。
日南町に工房を構える白谷工房(しろいたにこうぼう)は、寄木細工(よせぎざいく)でアクセサリーや日用品を制作している木工工房です。

ここで使われるのは、新しく仕入れた木材ではありません。家の解体で出た資材や、処分される家具など、一度は役目を終えた木材を活用しています。
元々は大工だったというご主人が解体現場に出向いて材料を調達することもあれば、「家具を処分するので取りに来ないか」と連絡をくれる人もいる。中には、工房へ直接家具を持ち込む人もいるのだとか。

森から切り出され、家や家具として人々の生活の根幹を支えてきた木材たちは、ボールペンやアクセサリー、日用品として姿を変え、今度は人々の手に収まる形となって、生活の一部に還っていきます。

また、ワークショップも行われており、木片を選び、組み合わせ、削って仕上げる寄木細工の醍醐味を体験できます。
普段は木と関わりのない私たちでも、「結び目の一部」になれるのです。

元々は保育園だった白谷工房。
建材、家具など様々な木材を組み合わせる。
不要な家具を引き取り、再度スポットライトを当てる。
工房では色々なアイテムを販売している。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回は鳥取県の日南町の魅力の一部をご紹介いたしました。

豊かな自然は、それだけでも十分に美しいですが、日南町はその自然に人が関わることで、もっと感動が生まれる町でした。
ホタルを「見えるように」環境を整える工夫があり、森を健全に保つために手を入れる仕事があり、役目を終えた木が日用品として暮らしに還っていく場所がある。
自然と人がただ並んでいるのではなく、意図して繋がっている。
この町に来ることがあったら、その「結び目」に注目してみてください。

福万来ホタル乃国
住所
〒689-5542 鳥取県日野郡日南町福万来
営業時間
公式HP参照
定休日
公式HP参照
公式サイト
https://www.nichinan-trip.jp/natural/fukumaki-hotaru/
駐車場
公式HP参照
※データ・写真など上記情報は記事作成時点のものです。
※臨時休業や営業時間の変更の可能性がありますので、お出かけの際は、最新情報はお店の公式HPや公式SNS、直接店舗にお電話ご確認ください。
※新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、施設へお出かけの際は、鳥取県・島根県や各自治体が発表する最新情報、要請などをご確認のうえ、手洗いやマスクの着用、人と人との距離の確保など基本的な感染防止対策(新しい旅のエチケット)を徹底していただくようお願いします。
白谷工房
住所
〒689-5671 鳥取県日野郡日南町福塚1002-1
営業時間
8:00〜17:00
定休日
日曜日
電話番号
0859-83-0180
公式サイト
https://shiroitani-koubou.com/
駐車場
あり(5台程度)
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y.takayuki0607
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伝統的な文化、歴史的建造物、星空や夜景撮影が好きで夜を中心に活動しております。 山陰の魅力を写真とキャプションで発信していこうと思います。 よろしくお願いいたします。
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