
厳選紅茶とこだわりの一皿で、至福のひとときを。境港市「BORDER」
午後のちょっとひと息つきたいときや、誰かと一緒にいる時間、皆さんは何を飲みたくなりますか?
私は紅茶が大好きで、先日友人に素敵なお店を教えてもらいました。
今日は、厳選された紅茶とこだわりのスコーンやお料理が楽しめるお店をご紹介します。ぜひ最後までお付き合いください。

訪れたのは、2024年8月、境港市にオープンした「BORDER(ボーダー)」。厳選した自然派ワインとオーガニック紅茶が楽しめるお店です。
店名「BORDER」は、境港の「境」や県境が近いことに由来し、世代や地域、食のジャンルなど、さまざまな“境=BORDER”を越えていきたいという意気込みを込めて名付けられたそうです。
白い壁に丸い窓が二つ並ぶ建物は、ぱっと見て「ぬりかべ」を思わせる外観で、お店のInstagramアカウントにも使われています。
鬼太郎のまちとして知られる境港らしい佇まいです。
境港へUターンしたご夫妻が営むお店

お店を営むのは、山本洋子さんと博樹さんご夫妻です。
これまで東京都内で暮らしていましたが、コロナ禍で仕事がオンライン化したことをきっかけに、洋子さんの地元である境港へ、2024年春にUターンされました。
洋子さんは、長年にわたり生活情報誌『オレンジページ』の編集を務めてこられ、『週刊ダイヤモンド』では2025年1月まで日本酒連載を執筆されていました。
日本酒と食のジャーナリストとして、日本酒やマクロビオティック、発酵食に関する著書を刊行され、独立後も県内外のセミナーで講師を務めておられるなど、幅広くご活躍です。
一方、博樹さんは定年まで大手部品メーカーの研究職に従事してきたエンジニアでいらっしゃいます。
また「山本薫」というペンネームで、日本酒の知識を活かし、田んぼと酒蔵を舞台にしたミステリー小説を出版されたこともあり、作家としての一面もお持ちです。
能登への想いを込めた「灯り」、鳥取らしさを感じるインテリア

店内の内装には、自然由来の植物油から作られた体に優しい塗料「オスモカラー」が使われています。
東京での住まいでも内装材にこの塗料を用いていたことから、お店にも取り入れたそうです。木目を生かすように塗装され、それぞれの木が持つ深みを感じられる仕上がりになっています。

お店には「境港らしさ」を取り入れたいと、イカ釣り漁船で使われる船舶照明を活用したいと考えていたそうです。
しかし、実際のイカ釣り用の照明は光量が非常に強いため、船以外の場所では使えません。そこで建築を担当した大松建設さんが紹介してくれたのが、石川県輪島市の「船のでんきや日東電機」さん。船舶照明を家庭や店舗でも使えるようにアレンジしてくれるとのことで、家庭用に光量を調整してもらいました。
能登半島の地震でお店が被害を受ける中、困難な時期を乗り越えて輪島市から境港まで届けられた大切な「灯り」。
「能登の灯りを境港からも灯したい」という想いを込めて、お店で明かりを灯しているのです、とお二人は話します。

インテリアショップで見つけた三枚組のアートパネル。
その絵を見て鳥取砂丘を思い浮かべたことから、お店の壁に飾ろうと購入したそうです。

鳥取をイメージした鳥のアートパネルや、境港を思わせる「船の窓」をモチーフにした丸い鏡。
建築には県産材も取り入れられ、あちこちに鳥取らしさが感じられます。
産地と品質にこだわった「紅茶」と、体に優しい「自然派ワイン」

お店の一角に、産地と品質にこだわった本場の紅茶がずらりと並んでいます。
お二人は、朝一番、365日紅茶ライフを送るほどの大の紅茶好きだそうです。
「紅茶を買うとき、茶葉がいつ頃に摘まれたものか気になったことはない?」と洋子さんに問いかけられ、振り返ってみると、私が気にしていたのは「茶葉の種類」と「値段」くらいだったなあと改めて思いました。
一般的な紅茶には茶葉の種類や生産国、賞味期限が記されていますが、お二人がセレクトした紅茶は、どの茶園で栽培・生産されたものか、さらに摘まれた時期までわかるものもあるんです。
紅茶を選ぶときには、味はもちろん、化学肥料や農薬を使わない有機栽培であること、高品質であること、そして生産者が搾取されていないことをお二人は大切にしているそうです。

紅茶だけでなく、ワインも種類が多いと、つい迷ってしまいますよね。
でも大丈夫。BORDERのメニューには、お二人が信頼するインポーターから仕入れたオーガニック紅茶や自然派ワインが、わかりやすい説明付きで載っています。
それでも決められないときは、お二人に相談してみてください。希望に合わせておすすめを選んでくださいます。
フードは、ワインに合うおつまみやパスタ、ピザ、そして紅茶やワインに合う焼き菓子まで揃っていて、とても充実しています。
知れば知るほど奥深い紅茶の世界

私はというと、やっぱり迷ってしまい、お二人に相談しました。
おすすめいただいたのは「海峡ブレンド」。
ヒマラヤ山脈の麓、ネパール・ダージリン・シッキム(インド)の3地域で育った茶葉をブレンドした、贅沢な紅茶です。
ティーポットからカップに注ぐと、香りがふわっと広がり、えぐみのないすっきりとした後味。まさに特別な一杯でした。

ところで皆さん、紅茶には季節ごとに摘まれる「シーズンティー」があるのをご存じでしょうか。
旬は、ファーストフラッシュ(春摘み)、セカンドフラッシュ(夏摘み)、オータムナル(秋摘み)の年3回。
旬が違えば香りと味がまるで違い、さらに、同じシーズンでも茶園によって味わいに個性が生まれるのだそうです。紅茶って本当に奥深いですね!
BORDERでは、このシーズンティーもメニューに取り揃えているので、紅茶好きの方はぜひ飲み比べを楽しんでみてください。

次の一杯は、私がメニューリストから選んでみました。
「オーガニック・ダージリン・マカイバリ茶園のベルガモットティー」です。ホットとアイスから選べるので、私はアイスをいただきました。
インドのマカイバリ茶園で育まれたダージリン紅茶に、イタリア産の天然ベルガモット香料を加えて香り付けしてあるそうです。
クリアでありながら気品を感じさせる味わいで、まさにシャンパングラスで楽しむのにふさわしい一杯でした。
マカイバリ茶園は、長年にわたり紅茶の有機栽培を続けている老舗茶園であり、海外から日本に輸入される紅茶として初めて、改正農林規格(JAS法)に基づく有機認定を取得した茶園でもあるそうです。
茶葉が海を越え、文化を越え、私たちの暮らしに溶け込んできた歴史を思うと、紅茶への向き合い方が少し変わってきました。
「自然派ワイン」、珍しい「本みりん梅酒」

BORDERの魅力を語るなら、やはりワインも紹介したいところです。
お二人のご経歴から、日本酒がお好きなのはよく伝わってきますが、ワインも同じくらいお好きなのだそう。
この日はお酒が飲めない私に代わり、頼もしい友人が取材に同行してくれました。
厳選された自然派ワインの中で彼女が選んだのは、ドメーヌ・ロマン・ジャンボン「ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォー」。
ボージョレは、フランス・ブルゴーニュ地方のボージョレ地区で、その年に収穫された「ガメイ種」のブドウから造られる新酒です。一方、「ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォー」の“ヴィラージュ”は「村」を意味し、限られた地域で栽培されたブドウを用い、より厳しい規制のもとで造られる特別なワインなのだそうです。

有機栽培の醸造家ロマン・ジャンボンさんが丁寧に仕上げる高品質なオーガニックワインは、ボージョレらしい軽やかさに加え、雑味のない果実味が魅力なのだそう。
友人は「とてもクリアでフレッシュな味。今まで飲んだボージョレの中で一番おいしい♪」と絶賛していました。
フレッシュでフルーティーな味わいが特徴のボージョレですが、通常の赤ワインとは醸造方法が異なることをご存じでしょうか。
一般的なワインはブドウを潰して搾りますが、ボージョレはブドウを潰さず密閉タンクに入れ、自然に果汁を引き出して造られるのだそうです。

そしてちょっと珍しいお酒もご紹介しますね。
こちらは本みりんベースの梅酒、その名も「梅美醂」。
昔ながらの伝統的な製法で3年かけて熟成させた本みりんに梅を漬け込んで仕上げた、まったく新しい味わいの梅酒です。

グラスに氷を入れて、氷を溶かしながら飲むと、「砂糖が使われてないのに熟成本みりんのまろやかで自然な甘さがあって、梅の爽やかな酸味と相まってとても美味しかったよ。」と友人は大満足。
お二人によると、食前酒やお料理の隠し味にもおススメだそう。
紅茶やワインに合う焼き菓子やお料理もいただきました
●紅茶に合うスコーン

紅茶のお供といえば、やはり焼き菓子。なかでもスコーンは欠かせません。
焼き菓子を担当しているのは、ご主人の博樹さんです。
実はお二人とも、以前はスコーンについて「口の中の水分を奪うようで、あまり好きではない」と感じていたのだとか。そこで博樹さんが何度も試作を重ね、口の中の水分を奪わないスコーンを完成させました。
現在は山口県産の小麦粉とカルピスバターを使用していますが、今後も「これは良い」と思える素材に出会えば、積極的に取り入れていく予定だそうです。

スコーンには、水切りヨーグルトにオーガニックバナナを合わせて。
バナナは一度冷凍させたものを使うと、まるでアイスのような食感になるのだそうです。
このひと手間こそが、美味しさの秘密なのかもしれません。
●ワインに合うスコーン

ワインに合わせて作られたスコーンは、大山こむぎを使用し、チーズとクルミを練り込み、砂糖は使っていません。

添えられているのは、サバのリエットに水切りヨーグルトを合わせ、刻んだタイムとバランカのオリーブオイルをかけた一品です。
親交のあるオリーブオイルソムリエの藤本真理子さんから、自身の肌トラブルをきっかけに「身体に良い油を摂ること」を意識するようになったことを聞き、洋子さんは食用油の重要性を意識するようになったそうです。
バランカのオリーブオイルは、イタリア・カラブリア産の希少なカロレア種オリーブを、丁寧に手摘み・選別して作られた豊かな風味の逸品。
●8スパイス+アッサムティーレーズンのフルーツケーキ

こちらは「8スパイス+アッサムティーレーズンのフルーツケーキ」。
大山こむぎとカルピスバター、卵にオーガニック紅茶を合わせ、甘味料には昔ながらの製法で作られる無精製の純粋な黒砂糖「マスコバド糖」を使用しています。生地にはレーズンがたっぷりと練り込まれています。
●焼き野菜のプレート

こちらは「焼き野菜のプレート」。
パプリカには飯南町の「いいなんパプリカ」を使用し、さつまいもや紫玉ねぎ、人参などの国産野菜をじっくりオーブンで焼き上げ、バルサミコソースで仕上げています。
レンズ豆は器に見立てたトレビスの葉に盛り付けられ、キャロットラペにはオーガニックのアールグレイ粉末がトッピングされています。
●本日のピザ

本日のピザは、コクのあるチーズとブルーチーズの二種類にナッツと蜂蜜を合わせ、仕上げにお店の庭で摘んだばかりのルッコラをトッピングしています。
チーズの塩気とはちみつの甘じょっぱい味わいが、ワインはもちろん紅茶にもよく合い、思わず手が止まらなくなる美味しさです。
夢を叶える場所として選んだ故郷・境港

笑顔で写真撮影に応じてくださった洋子さんと博樹さん。
記事の冒頭でも触れましたが、これまでお二人は東京を拠点に生活と仕事を続けてこられました。ところがコロナ禍で働き方が変わり、オンラインで打ち合わせができるようになったことで、「どこにいても良いのでは」と次第に感じるようになったのだそうです。
ちょうどその頃、同年代の知人が亡くなるという悲しい出来事もあり、「私にはまだたくさんやり残したことがあるのではないか」という思いが、より強くなるきっかけになったといいます。

やり残したことといえば、「海の近くに木造の一戸建てを建てたい」「いつか自分のお店を持ちたい」という夢。
その実現のために理想の場所を探す中で、洋子さんの故郷であり「境港FISH大使」も務める境港こそが、夢を叶えてくれる場所だと感じたのだそうです。
境港FISH大使は、境港商工会議所が創設した「境港市の魅力を伝え、PR活動を行う」制度で、県内外を問わず幅広く活躍している人が選ばれています。
「無添加の良いものを、地元の食材と共にお店で提供していきたいですし、境港の良さや面白さも、コンシェルジュのような存在としてお店を通して発信していけたら」とお二人は語ります。

いかがでしたでしょうか。
紅茶やワインがお好きな方には、これまでに味わってきたものとは少し違う風味を感じていただけるかもしれません。
また、苦手だと思っていた方も「こんなにも美味しいなんて!」と、苦手意識がなくなるきっかけになるかもしれません。 ぜひ一度、この味わいを体験してみてください。
- 住所
- 住所
- 鳥取県境港市浜ノ町141-1
- 営業時間
- 営業時間
- 15:00〜21:30
- 定休日
- 定休日
- 月曜日~木曜日
- 電話番号
- 電話番号
- 0859-21-5028
- 公式サイト
- 公式サイト
- https://www.instagram.com/border_sakaiminato/
- 駐車場
- 駐車場
- あり
