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ココビトの綴り 山陰まんなかアンバサダーが綴る 届けたいココへの思い San`in Mannaka Tourism Bureau presents [COCOBITO no TSUDURI]
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2024.06.20
location_on鳥取県,米子市,米原

伝統を守りつつ、さらなる進化を続ける「出雲そば 鹿幸」

山陰地方の代表的なグルメで欠かせないものといえば、皆さん何が思い浮かびますか?

自然に囲まれ、海や山の幸が豊富で魅力たっぷりの山陰ですが、ここ山陰には「日本三大そば」の一つ、「出雲そば」があることでも有名ですよね。
出雲そばのお店は数多くあり、同じ出雲そばでも店ごとに違いやこだわりがありますが、今回私が注目したのは米子市にあるそば屋「出雲そば 鹿幸(ろっこう)」さんです。

通ではない、ただのそば好きな私の取材になりますが、どうかお付き合いください。

とある日の早朝、ここは米子市にある地方卸売市場の東亜青果さんです。

この一角にあるそば店「出雲そば 鹿幸」さんにお邪魔しました。

元消防士が作る手打ちそば

お店には立派な石臼製粉機があります。

こちらが出雲そば鹿幸の店主、高橋さんです。

なんと前職は消防士という経歴の持ち主。「一度きりの人生だから、自分の好きなことで第二のステージの舵を取りたい」と、25年間務めた消防士を辞め、そば打ち職人の道へ。

出雲そばの産地で有名な奥出雲のそば店で約3年半修業を積み、2022年12月にこちらのお店をオープンしました。

店名「鹿幸」の由来は、高橋さんが尊敬する戦国武将、山中鹿介幸盛(やまなかしかのすけゆきもり)の名前を使わせていただいたそうです。
山中鹿介幸盛は「どんな困難も諦めない不屈の精神」を持ち、島根県を代表する戦国武将で安来市広瀬町生まれ。高橋さんの出身地でもあります。

しばらくして「ウウウ~!!」と、大きなサイレンが市場から響いてきました。

時計を見ると朝の6時30分。これから競りが始まるようです。

高橋さんの1日は、この市場の競り前からすでに始まっています。

聞けば、先ほどそばを1本打ち終わってこれから2本目に取りかかるそう。

今日は少しの間、そば打ちを見学させていただきました。

そば粉全体に水が行き渡るよう水を少しずつ入れ、慣れた手つきでそば粉と水を混ぜ合わせていく高橋さん。

すぐにまとめてしまわないで、少し大きくなったらまとめる、この手順を繰り返すそう。

生地の中の空気を押し出すように円錐形に整えます。

休む間もなく、今度はのして(伸ばして)いく作業に入ります。

高橋さんが、長年使い慣れた感じの麺棒を取り出しました。

かつてそば好きだった叔父が亡くなった際、趣味でそば打ちに使っていたものを譲り受けたそう。

この麺棒を持つと、叔父と一緒に打っている感じがして一層気持ちが入る、と高橋さんは話します。

生地がくっつかないように打ち粉をふり、丁寧に折りたたみ……。

いよいよ最終工程の「そば切り」。

駒板という板を置いてリズムよく切っていきます。

切り終わった生そばは乾燥を防ぐため、1人前ずつ「そば紙」に包み容器の中へ。

集中しておられたのでそば切り中は声を掛けませんでしたが、高橋さんによると、集中しすぎる方が良くないのだとか。

消防士時代から人と接する機会が多かったため、市場から聞こえてくる競りの声や、好きな音楽を聴きながらの方がそば切りがしやすいと話す高橋さん。

この時店内で流れていたのはジャズシンガーでピアニストのノラジョーンズの曲でした。

高橋さんが製粉前の玄そば(そばの実)を見せて下さいました。

メインに使っているのが奥出雲にある貴重な在来種「横田小そば」の血筋を引く「出雲の舞」。

島根県独自の品種なのだそう。

そしてこちらは出雲の舞よりやや大きめの粒が特長の「信濃1号」。

そば粉は天気や温度、湿度で挽き具合も違うため、日によって品種を変えています。

出雲そばと言えば麺の色も特徴的ですよね。

一般的なそばと比べて麺が黒っぽいのは、この玄そばを殻ごと挽いて製粉するためで、色が濃く風味が良いのが出雲そばの魅力なのだそうですよ。

豊富なメニューラインナップ

こちらが鹿幸さんの定番メニューです。

出雲そばで代表的な、温かい「釜揚げ」と、冷たい「割子」。

他には生ゆばそば、山かけ、そして「盛屋のザル」という気になるメニューを発見。
 


「盛屋のザル」とは?

以前ここは、「そば処 盛屋」というそば屋さんが長年お店を構えていましたが、盛屋の店主さんが引退を考え、後継者がいないことからお店を閉じることになりました。
それまで定休日以外、ほぼ毎日のように盛屋さんに通っていた高橋さんの叔父が、「この味を途絶えさせたくない」と、当時奥出雲のそば店で修業中だった高橋さんに「盛屋の味を受け継がないか」と声を掛けたことがきっかけとなり、同じ場所でお店を開くことになったのです。
高橋さんが習得したそば打ちと仕立てが違うため、最初はとても迷ったそうですが、それでも「やれる」と自分を信じ、高橋さんが打つ十割そばに、盛屋さんのザルそばもお品書きに加えるという形で「盛屋の味」を受け継ぎました。




■割子そば

割子と呼ばれる丸い器にそばを盛り、直接つゆをかけ、薬味をのせて食べる冷たいそばです。

時間が経つと麺同士がくっついてしまうので、こうして少量づつ入っているのは理にかなったものだと思います。

鹿幸さんのそばは、つなぎのない十割力強さを感じる太切りの麺です。

「できれば、たくさんそばを口に含んで食べてもらえたら。」と話す高橋さん。

その方がそばの弾力をより強く感じ、香りが鼻腔を抜けていくのがわかるのだそう。

香りには、食べ物を口に入れる前に香りを感じる「鼻先香(はなさきか)」、そして食べ物を口に入れてから香りを感じる「口中香(こうちゅうか)」の2つがあるそうですが、まさにそばは口中香かな?と思いました。

噛みしめて食べることで、野性味あふれるそばの香りと歯応えが楽しめます。

■トロ鴨そば(冬季限定)

鹿幸さんのそばで私が注目したのは「トロ鴨そば」。

鴨肉とネギが入った鴨南蛮そばは知っていましたが、鴨の生ハムとそばの組み合わせは初めてでした。

これは「マグレ・ド・カナール」というフォアグラ用に肥育された鴨の胸肉を生ハムにしたもの。

自分のそばにどの食材が合うか色々と組み合わせてみて、この生ハムに辿り着いたのだとか。

しっかりとした肉質で脂乗りが良く、美しい赤身を帯びた生ハム。

濃縮された旨味がそばの風味を引き立てているようです。

そしてトッピングには、前日からそばの煮かえしに漬け込んだ卵黄。

この組み合わせは最強です。

このトロ鴨そばを通年のメニューにするか悩んだそうですが、やはり手間がかかるので冬季限定となりました。

冬が今から待ち遠しくなります。楽しみにしていてくださいね。

■生ゆばそば

大判の生ゆばがそばをすっぽり覆い尽くしています。

お客さんからは「まるで白いオムライス」と例えられることもあるそう。

ゆばは奥出雲町にある「石田とうふ店」の生ゆばで、1枚ずつ手作業でゆばをすくう「手寄せ」という製法で製造されたものだそう。

国産大豆にこだわったゆばはトロトロでクリーミー。

最初はこのインパクトに圧倒されましたが、そばの美味しさを上手く引き出してくれているのは間違いありません。

美味しさの二重奏が楽しめるフォトジェニックなひと品。

お店で人気のメニューです。

■磯のり 釜揚げそば

良い海苔が入荷した期間だけ食べられる限定そばです。

釜揚げは、茹でたそばを水洗いせず茹で湯ごと丼に盛るスタイル。

そばの風味が最大限に感じられ、少しとろみのあるスープが味わい深いのだそう。

このそばの上に乗っているのは山口県の海産物屋さんから取り寄せた「養殖のり」。

高橋さんが色々な海苔を試食し、そばの風味を生かしつつ、かつ海苔自体も美味しいと感じたものだけを厳選して提供しています。

■天ぷら盛り合わせ

生ゆばとゴボウ、奥出雲の名産の舞茸の3種類。塩と天つゆでいただきます。

しっかりした歯ごたえのゴボウ、そして自ら奥出雲まで買い付けに行くという香り高い舞茸は、煮ても焼いても楽しめますが、天ぷらの味は格別。

生ゆばは天ぷらで食べると外はサクサク、中はとろけるチーズのよう!

ゆばそばで味わった時とはまた違う、ゆばの食感に驚きました。

■盛屋のザル

鹿幸さんのそばは十割ですが、盛屋さんのそばは2割の小麦でつないでいます。

一般的には二八そばと言われるものです。

この日の「盛屋のザル」に使われたのは、「北早生(キタワセ)」というそばを2割の北海道産小麦でつないだものでした。

鹿幸さんの太切り麺に対し、盛屋さんのそばはどちらかと言えば細麺です。

ツルツルッとした喉越しの良いそば。これは根強いファンがいるのも頷けます。

対照的な2種類のそばが食べられるのも、こちらのお店の魅力ではないでしょうか。

そば粉もそばつゆも、鹿幸さんと盛屋さんでは材料や作り方も違うのだそう。

鹿幸さんのそばつゆは強い火力で作り、野性味あふれるそばに合わせたつゆ。

こちらは数日で使い切るように作ります。

盛屋さんのそばつゆは中火で作り、出来上がってもすぐに使わないで、さらに1週間程度寝かせるのだそう。

こうすることによってお醤油の角がとれて味が丸くなり、盛屋さんのそばに合うのだとか。

そばもそばつゆも、それぞれ作るのにかなりの労力が要るはず。

定休日は、奥出雲まで玄そばや舞茸の買い付けに行くなど、休む暇もないのでは?

そんな心配をよそに、高橋さんは最後に私に素敵な言葉を教えてくれました。

「好きなことをしている時間は苦ではないんですよ。」

いかがでしたか?
鹿幸さんでは通年のメニュー以外に、季節ごとの限定メニューが楽しめるのも魅力です。
節分の日には出雲特産の「十六島海苔(うっぷるいのり)」をのせた釜揚げそば、中秋の名月には山かけそばに卵黄を添えた「お月見そば」。
創業日の12月24日は「鹿幸割子」という、ゆばやとろろの「白」、鴨の生ハムで「赤」をイメージした紅白の割子も登場します。

高橋さんのアイデアはとどまるところを知りません。
出雲の食文化の代表格でもある出雲そばの伝統を守りつつ、さらなる進化を求め、新しい時代に対応したものを研究し続ける「出雲そば店 鹿幸」さん。

是非みなさんも足を運んでみては?

出雲そば 鹿幸
住所
鳥取県米子市米原9丁目3−20 東亜青果株式会社 卸売市場内
営業時間
11:00~14:30(売り切れ次第終了)
定休日
火曜、他(Instagramにて確認)
公式サイト
https://www.instagram.com/rokkou55/
駐車場
あり
※データ・写真など上記情報は記事作成時点のものです。
※臨時休業や営業時間の変更の可能性がありますので、お出かけの際は、最新情報はお店の公式HPや公式SNS、直接店舗にお電話ご確認ください。
※新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、施設へお出かけの際は、鳥取県・島根県や各自治体が発表する最新情報、要請などをご確認のうえ、手洗いやマスクの着用、人と人との距離の確保など基本的な感染防止対策(新しい旅のエチケット)を徹底していただくようお願いします。

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山陰の魅力を食を通じて伝えていきたい。 ほんの少し笑いの小ネタも添えて(・Θ・)
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